映画

孤独と悲哀の狂詩曲。映画「ボヘミアン・ラプソディ」

クイーンを知ったきっかけ

最寄りの映画館での上映が1日1本になり、

いよいよ上映終了になりそうだったので急いで観に行った。

ぼくは現在33歳だけど、おそらく5歳10歳下の世代では

かなりの洋楽好きでないとクイーンにはそれほど馴染みがないはず。

ぼくが高校生の頃、木村拓哉主演のドラマ『プライド』の主題歌に

クイーンの「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」が使われたことで

当時の若い世代にもクイーンというバンドの名前が爆発的に広がったし、

ぼくもそれで初めて知ったと思う。

そして、事実上のドラマ挿入歌アルバムに近い『ジュエルズ』が発売され、

購入してよく聴いていた。

だから、ボヘミアン・ラプソディの上映を知った時、

すごく懐かしい気持ちになって、終わるまでには必ず観に行こうと思っていた。

映画が大ヒットしたおかげで、結構なロングラン上映になってるからよかった。

鑑賞

ということでようやく鑑賞。

(ネタバレありなので鑑賞予定の方は読まない方が良いと思います…。)

まず、バックヤードから『ライヴエイド』のステージに向かう

フレディ・マーキュリーの後姿から始まる。

歩きながら両手の拳を腰の前で交互に突き出す、

あのフレディ独特の動きが完コピされていて、早速鳥肌。

そしてスタッフがステージへと繋がる幕を開けたときの、

観客の多さ(もちろんCGだろうけど)と歓声に鳥肌。

青年ファルーク・バルサラ時代

そこで時間軸が切り替わり、フレディ・マーキュリーではなく、

ただの青年ファルーク・バルサラの時代に。

彼のルーツはインドだったんだ…初めて知った。

青年時代に遡り、ようやくラミ・マレック演じるフレディ

(面倒なので改名前でもフレディと書きます)の顔が映る。

ふざけた感想と思われるかもしれないけれど、最初に思ったのは、

フレディってこんな出っ歯だったっけ??である。

その出っ歯に慣れるまでのしばらくは、いろんなシーンでことあるごとに

出っ歯に目が行って気が散ってしまう。

が、エンドロールでクイーンの実際のライブ映像が流れたのでそれで見たら、

確かに結構出てたし、劇中でも「過剰歯だから口の中が広くて高音が出る」って

言ってた。高音が出る、じゃなくて声量だったかも…。はっきり覚えてない。

観に行ったライヴで、のちに結婚することになるメアリーとの出会い、

クイーンとなるバンドとの出会いが描かれる。

フレディが加入してバンドが『クイーン』になってからは結構トントン拍子で

音楽業界のステージを駆け上がっていき、

その過程でたくさんの名曲が生まれるシーンも出てくる。

スタンプ&ハンドクラップが特徴の名曲、「ウィー・ウィル・ロック・ユー」の

誕生秘話も意外でおもしろかった。

高校生でジュエルズを聴いていた頃は、歌詞の和訳など見てなくて、

メロディーラインの心地よさだけで聴いていたから、

英語もさっぱりなぼくは歌詞の意味をまったく理解していなかった。

それをこの映画で知ることとなった。

孤独や苦悩から生まれたであろう名曲たち

フレディがゲイだったことは、クイーンを知っていれば

それなりに有名な話で、もちろん映画でも描かれている。

今でも偏見は多いだろうけれど、

今よりももっともっとLGBTに不寛容な時代だったろうから、

自分のセクシュアリティの悩みは深かったんだろうなぁと思う。

出自についても劇中で、「パキ」「パキ野郎」「パキスタン」などと

罵声を浴びせられるシーンがある。

罵声と書いたけど、なぜそれが差別用語、侮蔑にあたるのかは

よく分からない。

イギリスという欧米において、自国の植民地だったパキスタン、

もしくはイスラム系を蔑む文化があるのかな?

クイーンには、「ボーン・トゥ・ラブ・ユー」に代表されるような

疾走感があって盛り上がる曲も多いが、「ボヘミアン・ラプソディ」のように

しっとり切ないメロディの曲も多いし、明るいメロディだけれど歌詞は切ない、

というものもある。

「Somebody to Love」なんかはまさにそれで、メロディは暗くないが歌詞は、

Can anybody find me somebody to love

誰か僕に愛する人を見つけてくれないか?

Each morning I get up I die a Little

毎朝起きる度に少しずつ死んでいくみたいだ

Can barely stand on my feet

自分の足でなんとか立っているけれど

(Take a look at yourself)

(自分の目で確かめてみて)

Take a look in the mirror and cry

鏡で自分の姿を見ると泣いてしまうんだ

Lord what you’re doing to me

神様あなたはいったい僕に何をしたのですか…

I have spent all my years in believing you

僕はこれまであなたを信じて生きてきた

But I just can’t get no relief, Lord

だけど全然救われないじゃないか 神様

Somebody, somebody

誰か、誰か

Can anybody find me somebody to love

誰か僕に愛する人を見つけてくれないか?

Studio Webli/Queen「Somebody to Love」和訳

と歌われている。

富や名声を手に入れても、セクシュアリティの部分では

結局のところどこまでいっても孤独で、

日々狂いそうなほど寂しかったんじゃないかな、と勝手に解釈した。

フレディがどういう意味の愛だったかは別として、

自分を男性として愛してくれ、自分も愛した女性メアリーを

ゲイだったが故に深く傷つけ、

ゲイとしてポールを愛したことで、酒やドラッグ、セックスに耽溺し、

仲間との絆が壊れた。

女を愛しても、男を愛しても、

相手を傷つけ、あるいは世間が理解してくれるはずもなく、家族になれない。

家族と称し、心の慰めの場であったバンドメンバーも、

次第に結婚し、本当の家族をつくっていく。

メアリーもボーイフレンドをつくり、新しい恋愛をしている。

そんななかにポツンと取り残された、ゲイの自分。

フレディの孤独は決して計り知れないけれど、

とても寂しかっただろうことはわかる。

そして皮肉ではあるけれど、

その孤独と苦悩が数々の名曲を生み出していった。

ポールとの決別。そして病気告白。

フレディが自宅で弱り寝ているところへ、

雨に濡れながらメアリーがたずねてくる。

理由を聞くと、フレディが声を出せなくなるという不吉な夢を見たから、

怖くなって急いで来た、とのこと。

そして、クイーンに20世紀最大のチャリティーコンサートである

『ライヴエイド』のオファーが来ていることをメアリーから聞き、

同時に、ポールがそのオファーを自分に隠していたことを知る。

メアリーに、

「ここの人たち(ポールや仲間)はあなたを気に掛けていない、

家族の元(バンド)に帰って」と諭され、

フレディはポールと決別。

別れる際、写真も持っているし、これまでのこと

(ドラッグやセクシュアリティなど)を世間に暴露する、と脅されたが、

フレディは好きにすればいいが、二度とその顔を俺の前に見せるな、

とだけいって立ち去る。

とはいっても、さすがにポールも暴露したりしないだろうな、と思ってたら

次のシーンではポールがテレビ番組に出演して本当に暴露してた。

ポールは本当にただのクズ。

それに比べてメアリーは、今は別の恋人がいるにも関わらず、

いつまでもフレディのことを心配して、応援もしていて、

素敵な女性だなと思った。

バンドメンバーの元に戻り、素直に許しを請い仲直りし、

その場でライヴエイドの話を持ちかける。

何年もステージに立っていないため、大規模なライヴに萎縮するメンバーに

フレディは、

「もしこれに出なかったら、ライヴエイドが終わったあと俺たちは

死ぬまで出なかったことを後悔することになる」

と説得して出演することに。

ライヴエイドを一週間後に控えた練習で、病気によりあまり声が出なかった

フレディはメンバーを集めて、エイズ発症を告白。

でも、「慰めたり、同情したりして俺を退屈させないでくれ」と

フレディらしいロックな言葉をメンバーに掛ける。

そして、

フレディ)声については少し時間をくれ。なんとかする。

     ウェンブリーの天井に穴を空けてやる。

メンバー)ウェンブリーに天井はない。

フレディ)じゃあ空に穴を空ける。

という会話がチャーミングだし、「なんとかする」とセリフが

プロフェッショナルを感じて、とてもかっこよかった。

※ウェンブリー…ウェンブリー・スタジアム。ライヴエイドの会場のひとつ。

ライヴエイド

そして時間軸は、映画冒頭のライヴエイドのバックヤードシーンに戻ってくる。

ポマードで固められたヘアスタイル、口ひげ、白いタンクトップに、

薄いブルーのジーンズと、トレードマークの脚のないスタンドマイク、

パフォーマンス、すべてがフレディ・マーキュリーそのもので、

もはや憑依しているといっても良さそうな演技。

というか演技というより、最後の20分くらいはライヴエイドそのものを

観ている感覚だった。

それくらい会場の作り込みもすごいし、

なによりラミ・マレックの役作りがすごすぎる!

実際のライヴエイドでは6曲演奏したらしいけど、映画では4曲。

最初はピアノで弾く「ボヘミアン・ラプソディ」から。

そして「RADIO GA GA」「ハマー・トゥ・フォール」「伝説のチャンピオン」

の順番でパフォーマンスされる。

映画を観ている方としては、エイズの事を知っているから、

フレディはこのとき命を燃やしながら歌っていたんだな、という辛さもあるが、

ライヴとして本当に素晴らしい。

出演者の演技も、使われているフレディの音源も素晴らしい。

これで映画の観客のテンションが上がらないはずないし、

当時ライヴエイドを観ていた世界中の人たちが盛り上がらないはずない!

映画のラスト、カメラはステージ後方からバンド、そして客席を映している。

全曲歌い終えたフレディが、ステージ裾に歩いて行きつつ、

後ろのメンバーを振り返るのがスローで流れる。

——エンドロール。

と同時に「ドント・ストップ・ミー・ナウ」がかかる。

エンドロールでは、その後フレディが1991年11月24日に

HIVの免疫不全による肺炎で亡くなったこと、

恋人のジム・ハットンと最期まで過ごしたことなどが紹介された。

こういう誰かの伝記的な映画は初めてみたけれど、本当に良い映画だった。

レイトショーということもあり、広いシアターに観客はわずか10組程度。

ぼくを含め男性一人客も多く、終わった後は皆淡々と席を立ち、

無言で帰って行ったけれど、きっと皆ぼくと同じように、

今すぐにでも誰かにこの興奮を伝えて感想を喋りたい!と

胸が熱くなっていたはず!!!

〈雑文〉不思議な感覚

鑑賞中ずっと、ほのかに香水が匂っていた。

たぶんぼくの後方からで、それが男性ものだったから、

映画中盤、フレディがゲイだとわかるあたりから、

その香水がまるでフレディの香りのような錯覚に陥って、

不思議な感覚だった。

HIVとエイズについて

HIVとエイズについて学校で学んだのは、高校の保健の授業だったと思う。

エイズを発症した患者の写真も見せられて、

その苛烈な症状に恐怖したのを覚えている。

その衝撃が記憶に残っていたからか、成人後何かのきっかけで

HIVとエイズについてネットで調べたことがある。

『ボヘミアン・ラプソディー』を観て久しぶりに

HIVとエイズについて考えさせられたので、

この病気について書かれているサイトのURLを貼りたいと思う。

エイズ予防情報ネット

HIV検査相談マップ

本当に基礎知識だしネットからの転用みたいなものだけれど、

調べるのが面倒な人向けに、本当の基礎知識だけここにも書きます。

HIV=エイズではない

【HIV】ヒト免疫不全ウイルスの略。つまり病名ではなくウイルスの名前。

【エイズ】HIVによる免疫不全によって引き起こされる代表的な23の疾患のうち、どれかひとつでも発症すること。

なので、HIVは「感染」、エイズは「発症」という言い方が正しい。

HIVを発症した、とか、エイズに感染という風に

混同されてしまっていることも多い。

HIV感染〜エイズ発症

①HIV感染・・・主な感染経路は「性的感染」「血液感染」「母子感染」。HIVは血液、精液、膣分泌液などに多く分泌される。

ただ、感染経路が「性的感染」「血液感染」「母子感染」という

単純な知識しか持っていないと、HIV感染者と性的接触をすると絶対感染する、

とか、親がHIV感染者なら子もHIV感染者、といった

偏見の元になってしまうので、専門サイトで正確な情報を手にして欲しい。

②急性期・・・感染して2〜6週間で発熱・だるさ・のどの痛みなど風邪やインフルエンザに似た症状が出るが数週間で消失。この時普通に病院に行ってもインフルエンザの検査をしてもHIV感染は発覚しない。あくまでHIV検査を受けないと感染有無は分からない。

③無症候期・・・急性期を経て、自覚症状のない無症候期に入る。無症候期は数年〜10年以上続く人もいるが、短期間でエイズを発症する人もいる。

④エイズ期・・・無症候期を経て、エイズに代表される23の疾患のうち、どれかひとつでも発症した状態。

HIV、エイズは治るのか

HIV、エイズは現在の医学では完治しない。

けれどHIVは、抗HIV薬によってウイルス増殖を抑え、

エイズの発症を防ぐことで、長期間にわたり健常時と変わらない

日常生活を送り、HIVを持っていない人と変わらないくらいの

寿命が期待できる。

しかし飲み続けないとHIVが薬の耐性を持ってしまうため、

一度治療を続けたら継続しなければいけない。

エイズを発症したら、発症した疾患に合わせて治療する必要がある。

HIV感染=死 ではないが、

まずはもちろんHIVに感染しないように自分の身は自分で守ること。

HIVに感染している人は、他人に感染させないこと。

感染したり感染が疑わしい場合は速やかにHIV検査を受けること。

が重要。

医療従事者でもないぼくが偉そうにいうことではないけれど、

『ボヘミアン・ラプソディ』を観て、

クイーンのヒストリーや楽曲だけでなく、

そのかけがえのないスーパースターの命を奪った、

HIV、エイズにも興味と関心を持って考えたり調べたりする

きっかけになればいいなと思う。

とにかく、こうやって考えたり行動する機会をくれた

フレディ・マーキュリーにありがとう。

『ボヘミアン・ラプソディ』本当に最高だったよ!

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