僕は音楽に詳しくないから、グレイトフル・デッドと聞いてもアメリカのロックバンドというくらいの知識しかなかった。
書店でたまたまこの本を見つけた時の感想は、「グレイトフル・デッド」と「マーケティング」が結びつかなすぎる…だった。
しかも帯には、「50年以上も前から、「フリー」も「シェア」も実践していた伝説のバンドに学ぶ名著が、文庫で復活!」とある。
とにかくいろんな意外性にひかれて思わず買ってしまった。
ほんとに学べる!「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」
目次を見ると、すでに気になる章がたくさんある。
書き出すとこんな感じ。
- 1 ユニークなビジネスモデルをつくろう
- 2 忘れられない名前をつけよう
- 3 バラエティに富んだチームを作ろう
- 4 ありのままの自分でいよう
- 5 「実験」を繰り返す
- 6 新しい技術を取り入れよう
- 7 新しいカテゴリーを作ってしまおう
- 8 変わり者でいいじゃないか
- 9 ファンを「冒険の旅」に連れ出そう
- 10 最前列の席はファンにあげよう
- 11 ファンを増やそう
- 12 中間業者を排除しよう
- 13 コンテンツを無料で提供しよう
- 14 広まりやすくしよう
- 15 フリーから有料のプレミアムへアップグレードしてもらおう
- 16 ブランドの管理をゆるくしよう
- 17 起業家と手を組もう
- 18 社会に恩返しをしよう
- 19 自分が本当に好きなことをやろう
どうですか?内容が気になりませんか?
例えば1章のユニークなビジネスモデルをつくろうは下記のような内容だった。
一般的にロックバンドとレコード会社にとってメインの収入源はアルバムだから、その販売促進としてライブをするのが基本的な「ビジネスモデル」だった。
けれどグレイトフル・デッドは、このモデルを覆した。
他のバンドのようにアルバム販売ではなく、ライブから収入を得ることに全力を注ぎ、他とはまったく違う正反対のやり方でライブを運営した。
例えば演奏するセットリストはライブごとに異なり、同じ曲でも演奏方法を変えた。
さらに、当時業界で最も優れていると評判だった照明と音響システムに大金を費やすことで、パワフルな音楽体験をファンに与えた。
少しの例外を除いて、ほぼ恒久的にライブを行い、やがて宗教の信者にも似た、繰り返しライブに来るファンが増えた。
熱狂的なファンはツアーと一緒に移動しながら、グレイトフル・デッドのツアー名物であるベジタリアン・ブリトスやドラッグ、風変わりな洋服などを売る屋台を並べるようになり、それもコンサートの一部になった。
その屋台の間を歩きまわるのもライブ体験となった。
こうしてロックバンドの典型的なビジネスモデルを覆すことで、バンドとファンの両方が恩恵を受けるようになったそうだ。
「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」の構成
この本の、各章は下記のようになっている。
- ① グレイトフル・デッドが実践していたこと
- ② ①を著者が解説
- ③ 上記を実践している(当てはまる)企業の事例紹介
- ④ 読者がビジネスでどう活かすべきか実践方法を解説
グレイトフル・デッドがしていたことをビジネスに無理やり当てはめるのではなく、きちんと論理的に説明がつくようになっているし、現代社会での具体的な活かし方、取り組み方まで書かれているので、読んだ後に実践しやすいと思った。
企業の事例紹介も、半分くらいは欧米の知らない企業だけれど、興味深くておもしろい。
13章の「コンテンツを無料で提供しよう」や、15章の「フリーから有料のプレミアムへアップグレードしてもらおう」も気になりませんか?
無料コンテンツは「フリーミアム」というビジネスモデルで、覚えている方も多いかもしれないけれど、10年ほど前にフリー<無料>からお金を生みだす新戦略というビジネス書が大ヒットした。
フリープランから有料プランへアップグレードをしてもらうビジネスモデルは、もはや今では当たり前で、
- ① 機能を制限した無料プラン
- ② 有料のスタンダードプラン
- ③ 有料のプレミアムプラン
のように、松竹梅で3つのプランがあるサービスをよく目にする。
無料で気軽に使えるけれど、機能的に少し不満な部分も用意することで、より機能が充実した有料プランに移行してもらうというもの。
本書内の企業事例ではAmazonのKindleアプリが取り上げられている。
電子書籍リーダーKindleは、iPhoneやiPad用に無料でKindleアプリを提供しているが、それを利用して読んでいる人は次第にiPhoneだと画面が小さいし、iPadだとデバイスが大きくてバッテリーの持ちが悪いことから、Kindle端末も買うようになるというビジネスモデル。
こういったフリーミアムや、その他現代でも通用するようなビジネスモデルを、ロックバンドであるグレイトフル・デッドが、どのように実践していたのか。
気になる方はぜひ本書を読んでみてください。
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ブックデザインはやっぱりあの人
書店でパラパラっと中をめくった時、力強くて自由な感じがするデザインだなと思った。
大胆さとか色使いも特徴的だったから、このデザインはもしかして…?
と思って奥付を見たら、やっぱりコズフィッシュの祖父江慎さんだった。
本が好きな方は、自然と装丁やブックデザインにも興味が湧いたりする人が多いんじゃ?と勝手に思っているけど、祖父江慎さんのデザインは本当に自由でおもしろい(でも本文デザインとかはめちゃくちゃ緻密)ので、祖父江慎+コズフィッシュという作品集もぜひチェックしてみてください。
それではまた、次の記事で。
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